以前はおトイレを終えるとトイレットペーパーを取ったりしていたし、紙パックの
ジュースを飲むときに両手で持ったりしていたこともあったのだが、何時の間に
か、手を全く使わなくなった。言葉と同様に退化が著しく、口径食などと引き換
えに大くの能力を失っている。自宅に入って緊張がほぐれて収縮が少なくなる
かと期待したのだが、右足を縮めるようになり、むしろ進んでいるように思える。
手を使えない、喋れないというのはなんと弱いものかと思う。彼女の意思をくみ
取るのは表情や習慣だけで、それを理解できるのは私だけでしかない。みどり
先生もそれを感じていて、むしろ緊張するようになったのかもしれない。病院なら
少なくとも多くの看護師さんが見守ってくれている。でも今は私が気付かなけれ
ばおトイレすら思うようにできない。急に体温が上がったりすることもあり、急に
下痢が襲ったりもする。食事のための買い物に短時間出掛けていても、ふと、
そんな不安を感じることがある。一面で生命力の強さも感じるが、それも綱渡り
のように危ういものだと思う。
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