みどり先生はときどき曲がってしまった指を見つめる。頭を枕につけると
振ってしまうのでたびたび首を持ち上げる。車椅子に乗っても首を下げて
しまう。食事の時には俯いているので口に入れてもぼろぼろと落ちてしま
う。「食事のときだけでいいから首を上げて。俯いていると口に食事が入ら
ないでしょう。たくさん食べなければ何時までも径管が取れないよ」という
のだが、少しもちあげるだけだ。私が首を持ち上げてまっすぐまでくるとす
ぐに下げる。「ここまで上げると痛いの?」と聞くと頷き、わっと泣き出した。
でも、すぐに泣くのをやめてかにのおかゆをぼろぼろ落としながら食べた。
ずっと耐えながら私に気遣っていたんだ。そしてその時もすぐに私に気遣っ
たようだ。最近は言葉を喋ろうとしない。はっきりした言葉にならないので
喋りたくないのだろう。今はまた落ち込みに入っている。でも、以前の落ち
込みと違うのは私に気遣って暴れたりしないことだ。私が手を口に持ってい
くと噛む代わりにペロリと舐めた。
病院を出てから私も泣いてしまった。ともかくマンションを買おう。二人で
生きられるだけ生きようと思う。あと2か月で退院になるが、どんな状態
でも二人で暮らそうと思う。この日記も今日を最後にみどり先生のことは
終わりにしたい。みなさんのお気遣いにはとても感謝しています。
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