ともかく一筆啓上とか、3歳馬のレーティングとか、やんなきゃならない仕事
を片付けて永生病院に向かうと、今日からリハビリとしてではなく車椅子を
使える許可が出て、夕食も経管ながら座って食堂でとるようになった。寝て
いるよりも車椅子が快適なようで、あたりを見回したり手を動かしたり、なか
なか活発だ。部屋へ戻ってからもしばらく座って過ごしたが、これまで全く
関心を示さなかったピンクの豚(彼女のクリニックの看護師さんの一人が持っ
てきた)を興味深そうに見つめ、手で触っていたので、ひざに乗せると少し遊
んでいた。しかし、なじみのブースケくんも持ってきたり、あれもこれもと見せる
と怒ってしまった。動きが早くなって手に噛み付きにくるのもかなりのスピード
だから油断ならない。「そんな本気で怒るのなら帰るよ」というと「早く帰れ」と
はっきりいった。今回はハ、カといった音も確かに発音した。また、そのように
言い返す気の強さももとのみどり先生のものだった。私が帰り支度をしている
と、泣き出してなにやら喋ったが、さすがに泣きながらなので聞き取れなかった。
「じゃ、もう少しいるけれど、もう帰らなければならない時間でもあるんだよ」
そして「明日も来るからね。バイバイ」というと、今度もはっきり「バイバイ」といった。
精神的にもかなりしっかりしてきて、車椅子では首を寄りかからせずに座ってい
る。時々起きる急激な発展の一つではあるが、将来への見通しの立つ大きな
進歩だったと思う。もうすぐ私以外の人にも喋るようになりそうだ。
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