毎年正月は特に忙しい。何といってもフリーハンデを一気に仕上げなければ
ならない。午前中に2歳馬のレーティングを終えて書き込みにかかる。レーティ
ングの集計とその書き込みには最大限の神経を使う。7と9の読み違えはない
かとか、ダートと芝、あるいは距離区分を間違えていないか。何度も確認しな
がら書き込んでも、再確認で間違っているところがある。もともと直感的な考え
方で生きてきた私には最も不得手なことでもある。3歳古馬もある程度レーティ
ングを終えた。そして永生病院に駆けつけると、みどり先生は眼の充血が少し
引いたものの、かなり具合が良くないように思えた。どこが悪いの? おむつ?
吸引? などと聞くがいずれもそうでないという。困惑していると何やら喋ったの
だがよく聞き取れない。握り締めた右手を私の顔に突きつけてくる。「何? 私が
イヤなの? 」と聞くと左手も私の顔に突きつける。「一人になりたいのなら帰るよ」
というと、「違う違う!」と叫ぶ。「じゃ、もう少しいるね」といってテレビを聞かせたり、
写真を見せたりするが、いずれも乗り気ではない。やがて眠ったようなので、帰って
きたが、帰りの電車でようやく気付いた。そうか、歯が痛かったんだ! 何かしてあ
げられることばかり考えていて、気がつかなかったけれど、明後日は歯の治療日
で、ほとんど抜けかけている。痛いだろうとずっと思っていた。喋ったのも「歯が痛
い」だったんだ。は、が、た、は喋り難い音で「わあいあい」のような音になる。手を
私の顔に突きつけたのも口を指差そうとしたのだった。正しく聞いて上げられなかっ
たと、とても後悔し戻っていこうかと思ったが、すでに消灯時間が過ぎていた。ミー
スケごめん。もっと勉強するね。
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