かなり前からクリスマス風景は変わってしまっていたが、今年はそれがさらに
顕著になっている。とにかく繁華街に人手が少なく、飲食店は普段と全く変わ
らない。それでいて高級なケーキ屋には行列ができている。私もクリスマス・
ブーケを病院に持っていった。みどり先生は手を伸ばして綿花を何度も触って
いた。他の花には目もくれず、綿花のみに興味を示している。まるで始めて綿花を
観たように・・・。このように興味を示してくれるものがあるととても嬉しい。明日
もその綿花に触らせてあげよう。幾つか持続的に記憶が残ればとも思う。
実際にはつかの間ではあるが素敵なクリスマスとなった。私と過ごしている時間
のみどり先生は外での態度とは全く違っていて、かなり怠惰で、甘えきっていた
のだが、それでもこんな小さなことに関心を示すこと少なかった。今の私はとて
も多忙で長く一緒にいてあげることができない。それでも彼女には時間感覚が
薄いと思うので、おそらくそんな綿花に触っている時間が長いものなのだっただ
ろうとも思う。年末のせいか、彼女の未支払いの経費に関して連日電話がかかっ
てくるし、引き落とし不能通知も毎日届けられる。とても疲れることだが、やはり
そんなみどり先生に会うと安堵する。このハードな毎日が嫌になることはなく、
どんな将来になるがわからないまま、ずっととても素敵な将来が待っているよう
に思えている。私自身いろんな仕事をして社会的地位も高くなり、作品は死んで
からも読み継がれそうだし、みどり先生とともにかなり贅沢な暮らしもしてきた。
でも、本当に望んできた生活はこれからのものとも思う。みどり先生はそんな
ことを考えないだろうが、それでも気付かぬまま最も望ましい生活に入っていく
のだと思う。生きるってこういうことなんだと気付いたようにも思っている。
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