今日のみどり先生は意外に明るく、むしろ笑顔に近いものも認めることが
できた。テレビをかなり長く見ていたし、私の顔も長く見つめていた。明らか
に外への関心が強くなっているように思える。そしてそれに応じて記憶の方
はさらに失われているように思えた。これは明らかに過去にとらわれず、こ
れからの自分を考えてのものと思う。ここ2,3日私が話してきたのもそうした
ことだった。記憶喪失はむしろ新しい人生に向かう上では好都合というべき
だろう。過去の記憶そのものは今後の人生にさほど役立つものではない。
必要なものはその気になれば取り戻せないわけでもないだろうと思う。ただ、
言葉の中にも案外意味のわからないものもあるようだ。彼女と話す場合には
パターン認識とか、直観力に訴えるような話しをしなければならないのだろう。
「何々を覚えていますか? それで・・・」という話し方が最も伝わらず、楽しい
という感覚とか、通じる話のパターンに当てはめてアナロジカルに話すような
テクニックが必要となる。私だけが話を通じさせているのも、単に私が最も親し
い人間だということだけでなく、こうしたさまざまな話し方のテクニックを心得て
いるということもありそうに思う。また、彼女の考え方を良く知っているというこ
ともありそうだ。彼女自身はさまざまな方法で多彩なサインを送り続けており、
それを理解することも重要だ。
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