今日は先月分の入院費の請求書が出てくる日。保険が7割持ってくれる
としても彼女の受けた治療や手術は数千万円かかるかもしれないと思え
る。そこで高額医療費補助や高額医療費貸付などの手配をするために
まず社会保険庁の外郭団体を訪れたが、扱っているのは市町村の国民
保険だけで、医師保険は医師国保の事務所へいってくれという。それで
医師国保に問い合わせると、市町村保険なら高額医療費割引票のような
ものをもらって、支払いの段階で補助が受けられるのに、医師保険の場
合は2か月後の返還になり、貸付制度もないという。もし数百万円なら借
金をしてまわらなければならないと不安にかられながらクリニックへ行き、
あと片付けをしていると、病院から電話がかかり、明日から一般病棟に移る
という知らせで、クリニックのスタッフと万歳をしてしまった。
病院に行くとみどり先生は変わらずで、良くも悪くもなっていない。この状態
で安定したので一般病棟に移るということのようだ。先生から説明を受けた
が、これ以上はあまり期待しないほうが良いということで、確かに手が動く
といっても持ち上げることができるわけではないし、首すら振れず、呼吸も
まだまだ苦しいので、悪く急変する可能性もなくはないという。実のところ
そうは考えていたが、ここ数日の急速な良化にあらぬ期待を抱いていたこ
とも否定できない。そんな期待も少しは残しながら、寝たきりのまま病院か
ら療養所というコースをメインに考えなければならない。これでマンションを
引き払い、車を処分する決心もついた。看護師長さんが請求書をもってきて
くれた。思ったよりもぐんと安いものだった。これなら何とかできそうだ。
みどり先生は少し楽になったのか、私をじっと見つめて涙を湛えていた。
医師としての再起はなくても、歩けるようにならなくても、彼女の新しい境遇
での幸せを求めることはできる。私は精一杯そのための協力をしたい。
今もみどり先生の眼は鋭く、高い知性にあふれている。とても美しく、とても
愛らしい。同情なんかではない。私は本当にみどり先生を愛している。
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