




ふと、若いころに強く影響を受けた哲学者たちの著書がいまはどのように評価されているのかと気になって、Amazonの出版図書を調べてみた。ニコライ・ベルジャーエフは当時共産主義との関係において一部の読書家に人気があったが、その後も多く出版されていて、「霊的終末論」というような著書は初めて知った。この表題がどこからきたものか読んでみてもわからないが、内容は「不平等の哲学」という書簡集だった。やたら過去を否定して「転向」した人なので、そんなベルジャーエフの変遷の理由がよくわかる著書でなかなか面白い。カール・ヤスパースは当時ハイデッガーと並ぶ実存主義哲学の大御所として知られており、今も出版点数は多いが、ハイデッガーが純粋に実存を突き詰めていったのに対して、ヤスパースは精神医学的に意識を追求しており、哲学的でないともいわれた。むろんそこが優れていて、現代的には哲学の基礎となるべき思想だったと思う。ミルチャ・エリアーデは当時「永遠回帰の神話」が訳されていただけだったが、私はこの本を毎日持ち歩いて読み漁っていた。むろん宗教学者、民俗学者、そして作家として現在はほとんどの著作が訳されるようになり、愛読者も多く、最も現代に適合した哲学者といえるだろう。マックス・ピカートはその後ほとんど話題にのぼることがなく、翻訳点数も少ないように思う。「騒音とアトム化の世界」は現代的にいえば「エントロピーとオタクの世界」ということなので、本来は最も現代に適合した哲学者と思うのだが。オルテガ・イ・ガゼットは最近の樺山三英さんの「ドンキホーテの消息」の思想的背景となっている哲学で、今も「大衆の反乱」の勢いは治まらない。
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