オリンピック開幕の日であると同時に,今日はヒロシマに原爆が投下された日でもある。原爆という言葉すら古びて、今では核兵器としか言われなくなり、原爆はむしろ黒い雨で始まり、一瞬にして大量の死者や障碍者を発生させる災害のように扱われてしまっている。確かに誰にも、どの程度の規模の社会集団にもどうにもならないという点で災害に似ている。天瀬裕康さん(SF界では渡辺晋名義で知られている)は少年時代に広島で被爆し、被爆体験からまず医師として被爆者への治療を志し、一方て作家として被爆体験を語り続けてきた。「異臭の6日間」は渡辺少年の被爆6日間を淡々と事実のみ正確に再現したドキュメントで、何が起こったのかわからないまま現実的な対応に追われていき、原爆が未知のものであるための災害的な終末感がどっしりと読者の意識に浸透してくる。「闇よ、名乗れ」は全く逆に歴史と塵を超越して飛躍しながら人間文明の地獄を発掘していくSF作品で、原爆の日にぜひ多くの人にお読みいただきたい作品です。
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