


神保町東京堂で岡和田晃のブックフェアが開かれているが、このフェアは単に岡和田の編著書だけでなく、岡和田の評論で論じられている著作や、岡和田思想の基底を形成するような著作が同時に展示即売されるという画期的なもので、書店からは姿を消してしまっているような図書も多い。そこに私の傑作集2冊も含まれているのもうれしい。
岡和田晃は数年前にSF評論家としてデビューした新人ではあるが、その後の仕事は素晴らしく、特に向井豊昭の作品の発掘と論評に文壇はさほど反応を示さないが、読者や出版界、書店の反応はブームといえるほどのもので、このブックフェアもその表れといえよう。「北の想像力」という大著は北海道文学とSFの総覧というべきもので、北海道文学には安部公房の時代からコスモポリタニスムのようなものがあり、日本という枠を通り越しての世界文学的な一面が認められた。それが過去の日本文学と呼ばれてきた人間関係に根差したコンプレックス小説に拒否反応を持つセカイ系世代から強い支持を受けるようになっていると思う。小林多喜二の「蟹工船」がブームを呼んだのも蟹工船が完全な独立国の世界だからだろう。SFにも同じような面があり、実際に北海道出身のSF作家、荒巻義雄、川又千秋、円城塔などには同様の世界文学的傾向がり、これはルーマニアのエリアーデ、ポーランドのレム、コロンビアのマルケスといった小国の作家たちとも共通するものと思う。
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