ひと頃SFは拡散されてしまってジャンルとして崩壊しつつあると
いわれていたが、確かにSF作家の集まりやSF大会などに出てみ
ると昔のままのメンバーが多く、ジャンルとしての規模は昔と変わ
らないようにも思えるが、実際のSF作品の出版点数は非常に多く、
作家の数も増大し、それら作品の内容も極めてバラエィティに富ん
だものとなっている。間違いなくSF読者は増えているし、さまざ
まなタイプの作品がそれぞれに読まれているようだ。こうした点で
は純文学や大衆小説と呼ばれてきた作品群とは比較にならないほど
大きく発展しているといえるだろう。それらの多くはかなり難解で
読むのに一苦労というところがあり、私の作品が「こんな読みやす
いSFがあったのか」といわれるのもなるほどと思う。「内宇宙の
銀河」「殺人者の空」のような作品は発表当時全く反応がなく、実
際にこれらについての批評というものも全くなかったが、今回の傑
作集で最も反応の大きいのがこれらで、それもそれぞれに正面と向
きあって、それぞれに理解して私の気付かなかったようなテーマを
引き出していることにも驚かされる。SF読者だけがまだまだ小説
の読者であり続け、さらに進化を期待しているようにすら思える。
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