みどり先生は寝ているとほとんど病人に見えない。顔色も
よく、表情も豊かで、指先でタオルをつまんで顔を拭いた
りしている。それでも彼女は喋れないし、腕も伸びないし、
立てないし、自分で食事もトイレもできない。私といる限
りはいつも幸せそうな顔をして時々けらけらと笑う。彼女
は自分が使える神経メモリーをそのような状態にうまく持っ
て行った。これは他の人には絶対にできないことだろう。
まるで自分の今の状態のすべてを理解して、その中でベス
トな方法を考えだし、そのように自分の体をコントロール
できたようだ。その状態が私によって保たれていることも
よくわかっていて、ショートステイで一人になっても我慢
しているし、私が遅れていくと怒るし、やはりつらいのか
泣き出すことも多い。ショートステイから戻ると一日中に
こにこしているので、見た人はどうして今日はこんなにご
機嫌なのという。退院するときに絶対条件となっていた口
径による食事をするようになったのも、それが必要とわかっ
ていて、寝たままの食事という類例をみない方法を可能に
したのではないかと思える。みどり先生って本当に天才だ
と思う。
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