みどり先生の回復力は驚異的で、リハビリ効果もぐんぐん増してきた。
使えるメモリーが増えたためにさまざまなことを考えるようになり、鎮静剤
を使うことも多くなっている。神経質になると不随意運動も多くなる。スト
ローでドリンクを飲んでいても、すぐに舌の不随意運動に妨げられてスト
ローをはずしてしまうが、そんな時には舌をストローと下唇の間に挟んで
コントロールするというような芸を見せてくれる。さすがに医師というべき
か、自己コントロールの天才だと思う。ストローを出したので、ヘルパー
さんがドリンクを片付けると、急になにやら喋り始めた。どうやら「まだ飲む」
というようなことをいったようだ。これまでの喋りは突発的なもので、それだ
け記憶をまるごとだしていたのためはっきりした言葉となったが、今回は全く
違っていて、自分で一つ一つの音を搾り出して喋っているようだった。それ
だけ言葉は不正確でわかり難いものではあったが、同時に画期的なもので
彼女の能力からは正確な言葉までさほど時間がかからないと思える。介護
はますますたいへんになってきたが、大きな喜びもともなっている。
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