井口保子、小道迷子、豊崎由美にみどり先生も加わって5人で飲む会が
10年以上続いてきた。その間に豊崎さんは超売れっ子評論家となった。
それまでの文芸評論は主に書き手の立場からの評論だったが、豊崎さ
んは読み手の側からの評論を開拓した。これは全ての産業にも起きてい
る生産者サイドから、消費者サイドの視点への転換となる。生産者
サイドからの評論では作家が影響を受けた図書であったり、土地であっ
たり、日常的な行動であったりしたものが、消費者サイドからはどうでも
良い存在となる。むしろ社会のトレンディであったり、人にありがちな考え
方であったり、類似作品との違いであったり、素直に人に与える衝撃で
あったりということになり、これは明らかに日本文学に欠けていた考え方
でもあるだろう。それが伝統的な私小説などを発達させてきたわけでも
ある。豊崎さんはよく喋るし、何にでも関心を持ち、常に平均的な日本人
の考え方から出発してさまざまなところに深入りし、また平均的な立場に
戻ってくる。それをできる才能は稀有なものといえるだろう。好き勝手を
書き、話しているようで必ずしも自分の考えを強く押し出すわけでもない。
飲み会での話も全くそういう感じだ。小道さんは数年前からベジタリアン
になったので一人だけ食べ物が違う。刺身の代わりに何が出てくるだろ
うとか、興味しんしんだが、筍や湯葉、山菜などを使った見事なコースと
なっている。板長さんはたいへんだろうが、手腕の発揮しどころでもある。
食事のあとはカラオケへ。最近のカラオケは良い酒を置いているので、
二次会には最も良いが、井口さんはカラオケボックスが初めてという。
すっかり気に入ってこれからは一人ででも歌いに来たいという。みんな
井口さんのソプラノを楽しみにしていたが、アナウンサーは声の鍛錬を
しているので、本格的な歌となる。半分台湾人の小道さんは中国語の
歌を、それぞれ性格も活躍場も違うのに盛り上がった一日です。
記事の下に広告が表示される場合があります。この広告はexciteの広告枠で、当ブログとは無関係です。