みどり先生のいとこ一家と夕食を食べて家に戻ったが、どうしても会いたく
なって、ヨドバシカメラでラジオを買い、もう一度病院に戻った。どうしても試し
たいことがある。「コーちゃんがわかる? わかったら目を閉じて開いて」とい
うと、すぐに目を閉じて開いた。それから少しみどり先生がどうなったのかを
説明した。悔しげに顔をゆがめて涙を流す。いたたまれなくなったが、どこか
で知らなければならないことだ。「みんなのために働きすぎたんだよ。今は
ゆっくり休んでね。きっとまた楽しい日がやってくるから」と、話すが、しばらく
は何度も悔しげに涙を流す。病院のこと、持ち馬のこと、さまざまに考えてし
まうのだろう。でも私には大きな大きな喜びだった。死から抜け出し、ベジタ
ブル状態から抜け出し、いまは意識障害からも抜け出しつつある。脳外科の
先生は手術前に、そうなるには奇跡を待つしかないとおっしゃった。まさにそ
の奇跡が起こりつつある。ラジオのイヤホンをつけて「聞き続けるなら目を閉
じて開いて」というとパチクリと目を閉じて開く。そして少し安らかな顔に戻った。
消灯時間が近づいても離れたくない。でもみどり先生は悟ったように静かに目
を閉じる。愛してる、愛してると何度も何度もいった。うなずくように目をパチパ
チと開いて閉じた。
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