「サンリオSF文庫総解説」(本の雑誌社、2014.10月に紹介)が今年度の星雲賞を受賞した。星雲賞というのはアメリカのネビュラ賞をもじったものだが、ネビュラ賞がSF大賞と同じように作家協会の投票で選ばれるのに対して、日本の星雲賞はアメリカでのヒューゴー賞のようにSF大会の登録者による投票で選ばれるもので、SF界でしか不可能な独特のシステムによって授与されている。サンリオSF文庫は出版当時、それまでのSF概念からかけ離れているとか、難解だとか、さまざまな理由によってSF界から拒否されてきて、一方では既成SFの低俗さから新たな展開を見せたものとして一部の読者から強力な支持を得てきた。このため、サンリオSFは古書店で高額な価格で取引されるようになり、出版界でも続々と再刊されるようになった。歳月の流れがSFを大きく変えていき、伊藤計劃以降といわれる近年の作家たちの多くはサンリオSF的なSF理念によるすぐれた作品を書くようになり、実際に伊藤計劃、円城塔はサンリオSFの主要な刊行作家だったフィリップ・K・ディツクの名を冠したアメリカのディック賞を受賞している。そうした最近の傾向から日本でのSF読者も大きく変わっていき、かつてはSFの破壊者といわれた「サンリオSF文庫」の解説書を大歓迎するようになったということだろう。この解説書では多数のSF評論家、マニアやファンが執筆しているが、全員がよく難解な作品群を読み込んで優れたレヴューを残しており、編者の大森望、牧眞司もそうした意義を理解して作成されているので、過去のこうした解説集から抜け出した斬新なものとなっている。大森さん、牧さんおめでとうございます。
写真は牧さんへの賞状とプレートです。
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